空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

海外生活2カ国6年目。いろんな国を訪問し、いろんな経験をして、いろんな人と出会いたい。そんな想いを募らせるうち、いつの間にかここに至りました。本ブログでは、米MBA留学及びその後の海外経験を中心に記載しています。

【書評】会社の値段 (M&A関連本)

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帰国前にM&Aの理解を深めておこうと次の2冊の本を読んだ。「会社の値段」と「創業者のかしこい選択M&A」。どちらの本にも共通するのが、日本社会が持つM&Aに対する不信感や嫌悪感を払拭したいという筆者の思い。日本にはまだ根強く残っているのだなぁ。

でもこの2冊は得られるものが全く異なる。社会人としての知識を得るのには前者が絶対的にお薦めで、後者は、中小企業の創業者以外は読まなくてもいいかもしれない🤷‍♂️

前者「会社の値段」はアマゾンでもかなり売れている。著者は、ハーバード・ロースクール卒、米投資銀行ゴールドマン・サックスM&Aアドバイザー業務を担当していた森夫明氏。株式市場の仕組みから、会社の価値、M&Aまで、比較的平易な文で定性的・定量的に議論がバランスよく展開されていて読みやすい(会計やファイナンスの知識なしに全部理解できるかは不明だが)。

彼がこの本を著した理由は、日本の株式市場を健全に機能させたいからだと言う。そして以下が必要だという。

  1. 日本の一般投資家が正しい知識を持ち、企業の価値を正しく評価できること
  2. 企業の経営者が経営理念・戦略・中期計画をきちんと株主に開示し、株価を適正水準に保つ努力を行うこと

この本から私が得たものは大きく、感謝大だ。特に、株式市場の仕組みや企業価値評価の考え方を鳥瞰する視点で説明してくれるため、株式市場では誰が何をどうやり取りしているのか、財務諸表のアイテムそれぞれがどう企業価値の何を意味するのかといった物事の基本、全体像を理解できたと思う。その他、この本を参考にM&Aポートフォリオの軸を作れそうなことも非常に助かる。

目から鱗はこれ。

P125:利益とキャッシュフローのどちらかを使うという違いはありますが、PERという倍率は、現在価値への割引率の逆数と同じなのです。 

会社の値段 (ちくま新書)

会社の値段 (ちくま新書)

  • 作者:森生 明
  • 発売日: 2006/02/01
  • メディア: 新書
 

さて、2冊目の「創業者のかしこい選択M&A」だが、、、

言ってしまえば、株式会社ストライクというM&A仲介サービス会社のいわば販促ツール。うちの会社にもサービス紹介や成功事例を記載した営業用販促ツールがあったが、それとなんら変わらない。彼らの潜在顧客である中小企業の創業者に向けて、会社を売却することが経営者にとって如何に魅力的かをうたっている。前半では5つの事例を経営者の心情を交えて会社売却が物語風に記し、後半では、企業価値評価の基礎、M&A、売却までの手順などが紹介されている。ストライク社の社員が写真付で記事を分担書きして、いかに安心なサービスであるかを説明する苦労が伺える。おまけにストライク社への連絡・企業価値見積もり依頼用のハガキも挟まっている・・・

まぁ、学んだことがゼロかというとそうではなく、以下は新たな発見か。

  • 一族経営の中小企業が会社を手放すときの手順とその心情
  • 中小企業の企業価値評価の際によく使われるという年買法
    (一族経営の中小企業は事業計画なるものが無いのが当たり前で、DCF法は使えないそうな・・・)
  • こういう営業ツールを本として出版することの意味
    市場規模の拡大を狙うものであり、自社サービスの宣伝も行うというコーペティション(協調)におけるComplement的意味合い。この手はどの産業でも有効だね。

でもまぁこういった本をさらっと読めるようになったのは成長の証か。あと2ヶ月後の実践が待ち遠しい🙌