空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

海外生活2カ国6年目。いろんな国を訪問し、いろんな経験をして、いろんな人と出会いたい。そんな想いを募らせるうち、いつの間にかここに至りました。本ブログでは、米MBA留学及びその後の海外経験を中心に記載しています。

【書評】イノベーションへの解

「イノベーションのジレンマ」を読んでから約2年経ってしまったが、ようやくHBS・クリステンセン教授の第2弾「イノベーションへの解 収益ある成長に向けて」を読み終えました。題名からも期待していましたが、実際にイノベーションをマネジメントする際のヒントが多く詰まっていたように思います。大企業内のコーポレート・ベンチャーキャピタルとして動ける私の一番の収穫は、「大企業内で破壊的イノベーションを成功させる方法の一つは、有望なベンチャー企業に出資しその事業開発を取り組ませ、大企業は後方支援に徹する。そしてそのベンチャー企業が成功する従い、資本比率を上げていくことである」ことを再確認できたことでしょうか。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、大企業はある魅力的な市場機会を見つけた際に、結構、自社で取り組んだほうが成功すると考えてしまいがちなのですよね。ということで、いろいろな場面で実践していきたいと思います。

しかしこの本は論文もしくは教科書のような内容なのでいつもと比べて3倍くらい時間がかかってしまいました。頭がクリアなときじゃないとすっと入ってこないうえ、いろいろ自分の業務に照らし合わせて考え込んでしまうのでなかなか読み進まないんです。こういう本をさらっと読める人になりたいのですが・・・ 以下、最終章にある経営者への助言の要約+αをメモっておきます。

<経営者への助言 P345>

実績ある企業が喜んで無視するか背を向けるような破壊の足がかりを発見すること。低価格ラインでも魅力ある利益をあげ、上位市場に持ち込むことができるようなコスト構造を最初に構築すること 。

無消費に対抗する方法を探し出すこと。これまで無消費者だったためにそこそこの製品で満足してくれる。 無消費が無い場合は、ローエンド型破壊戦略の可能性を検討すること(ローエンドには競争基盤を変化させるチャンスが多い)。今対価を支払わされている機能を使いこなしていないローエンドの顧客を捉えるために、必要な割引価格でも魅力的な利益を実現できるビジネスモデルを考案すること。

顧客がすでに片付けようとしていることを、一層手軽に安価にこなすのに役立つ方法を見つけること。顧客が片付けようとしている用事に即した方法で市場を分類し、その用事にターゲットを定めること。モジュール型やオープン・スタンダードを時期尚早に追求したり、競争基盤が変化しても独自アーキテクチャを非公開にしたりしてしまうと成功はおぼつかない。

これまで金があった場所ではなく、これから金が向かう場所へ滑走すること。新事業が成功するための資源、プロセス、価値基準を持つ組織構造と運営主体を選ぶこと。新事業のチャネルの資源、プロセス、価値基準も事業の成功に大きく影響を及ぼすことを考慮すること。 新事業マネージャ選定の際は、「新事業が直面することがわかっている諸問題」を「候補者が過去に取り組んできた経験」で埋めることを考えること。

利益を気短に急かすこと。一方、(新事業の規模という意味での)成長を気長に待てるように会社の成長を持続させること。

<アイディアを破壊的戦略と形成するリトマス試験 P64>

  1. 新市場型破壊の検証(少なくとも一つがYesでなくてはならない)
    - これまで金や道具、スキルが無いという理由で、全く行わずにいたか、料金を支払って高い技能を持つ専門家にやってもらわなければならなかった人が大勢いるか?
    - 顧客はこの製品やサービスを利用するために、不便な場所にあるセンターに行かなければならないか?
  2. ローエンド型破壊の検証(ともに満たされれば可能性はある)
    - 市場のローエンドには、価格が低ければ性能面で劣る(が十分良い)製品でも喜んで購入する顧客がいるか?
    - こうしたローエンドの「過保護にされた」顧客を勝ち取るために必要な低価格でも、魅力的な利益を得られるようなビジネスモデルを構築することができるか?
  3. 第三リトマス試験(1または2のテストに合格した場合の試験)
    このイノベーションは、業界の大手企業全てにとって破壊的だろうか?もし一社もしくは複数の大手プレーヤーにとって持続的イノベーションである可能性があれば、その企業の勝算が高く、新規参入者の勝つ見込みはほとんど無い。

イノベーションに必要な社内調整 P141>

  • まず、資源配分プロセスではイノベーションを脅威として位置付けることで最高幹部からコミットメントを引き出す。次に、このプロジェクトを機会として捉えることができる自立的な組織に責任を任せる
  • 持続的イノベーション、一部のローエンド型破壊では、競争の見通しがはっきりしているため、戦略を意図的に策定し実行に移すことが可能。だが、新市場型破壊の生成期に、細部まで正しい戦略を持つことは不可能に近い。この状況では戦略を実行するのではなく、有効な戦略が生まれ出るようなプロセスを進めなくてはならない。→発見志向計画法
  • 発見志向計画法: 1.目標とする財務成果を打ち出す 2.どのような仮定の正しさが証明されればこの目標が実現されるか?優先順位をつけ列挙する 3.重要な仮定の妥当性を検証するために学習計画を実行する 4.戦略を実行するために投資を行う

<その他>

  • 多くのアナリストは、事業部門を統合して規模を拡大すれば、不要な間接費を削減できると主張するが、統合の結果巨大化したユニットが、立ち上げる全ての新事業に対して、急激な成長を要求するようになるという影響を見落としている(P307)
  • 製品の機能性と信頼性が顧客のニーズを満たすほど十分でない状況では、独自の製品アーキテクチャを持ち、バリューチェーンの中で性能を制約しているインタフェースをまたいで統合されている企業が優位性を持つ。だが、機能性と信頼性が十分になり、代わってスピードとレスポンスが「十分でない」次元になったときには、その逆、つまり特化型の専門企業で、相互作用の方式がモジュール型のアーキテクチャ業界標準によって定義されている企業が優位に立つ(P179)
  • コモディティ化バリューチェーンのどこかで作用しているときは、必ず脱コモディティ化という補完的なプロセスがバリューチェーンの別の場所で作用している。バリューチェーンのなかの性能がまだ十分でない地点に位置する企業が利益を得る(P182)
イノベーションへの解 収益ある成長に向けて (Harvard business school press)
翔泳社
クレイトン・クリステンセン

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