空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

海外生活2カ国6年目。いろんな国を訪問し、いろんな経験をして、いろんな人と出会いたい。そんな想いを募らせるうち、いつの間にかここに至りました。本ブログでは、米MBA留学及びその後の海外経験を中心に記載しています。

【書評】ルポ 貧困大国アメリカ / 米史最低の支持率で幕を閉じるブッシュ政権 ③

米史最低の支持率で幕を閉じるブッシュ政権 ②から続く)

最後に「戦争も民営化され、人のいのちに値段がつけられ始めています。米軍の下請け企業として利潤のみを追求する民間の人材派遣会社が存在し、イラクなど戦地における武器輸送・保管などの危険な業務に貧困層を派遣しているそうです。貧困から抜け出すためなら、と志願する貧困層も少なくないそうですが、現地では正規軍人よりも低い身分としての扱いを受け、危険な場所に真っ先に派遣され実際に死に至ったりするものも多いそうです。しかし、派遣社員は民間人扱いで戦死者にはならず、つまりは政府は発表する義務が無いため、あまり表に出てこないというのが現状とのこと。また、現地では40度以上の炎天下で何時間も働かされたり、食事はアメリカ軍人の残飯のみ、そして水は放射能を帯びたものを飲まざるを得なかったりして、結局思い病を患って帰国し戦地に行くよりひどい貧困状態に陥ることも多いそうです。

P187 (貧困のため米国軍入りした唯一の日本人のコメント)「苦しい生活のために数少ない選択肢の一つである戦争を選んだ僕は人間としてそんなに失格ですか?たまたま(憲法)九条を持つ日本に生まれたからといって、それを踏みにじったとなぜ責められなければいけないんでしょう。(中略)僕が米兵の一人としてイラクで失ういのちと、日本で毎年三万人が自ら捨てるいのちと、どちらが重いなんて誰に言えるんですか?」 60年以上日本を戦争から遠ざけていた平和憲法の力が及ばないその世界では、まったく別のビジネス論理によっていのちに値段がつけられているのだ

P188  「個人情報」を握る国と「民営化された戦争ビジネス」に着手する企業との間で、人間は情報として売り買いされ、「安い労働力」として消費される商品になる。戦死しても名前が出ず数字にすらならない、この顔の無い人間たちの「仕入れ先」は社会保障削減政策により拡大した貧困層、二極化した社会の下層部だ。たとえ一国内であれ地球全体であれ、格差は拡大すればするほど戦争ビジネスを活性化させ、そこから出る利益を増大してくれる。  現在、戦争請負業界で、イラクは「ゴールド・ラッシュ」と呼ばれている。

 

新年の1月20日ブッシュ政権アメリカ政治史上最悪の支持率で幕を閉じることになります。「変化」を掲げてきたオバマ新政権がこのような国の根幹部分をどう変えてくれるか期待したいところです。 また米国に追いつけ追い越せとやっきになってきた日本も他人事ではありません。「安倍内閣の下で民営化が進められ、社会保険庁介護施設、刑務所などが次々に民営化の流れに組み込まれ、(中略)OECDにおける相対性貧困率ランキングにおいて日本はアメリカに次いで第二位になっている(P198)」とのことですから。私たちも新しい目で世界を、そして日本を捉えなおしていかなければならないと考えさせられました。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
岩波書店
堤 未果

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