空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

空を行こう 〜 ミュンヘン駐在編 〜

海外生活2カ国6年目。いろんな国を訪問し、いろんな経験をして、いろんな人と出会いたい。そんな想いを募らせるうち、いつの間にかここに至りました。本ブログでは、米MBA留学及びその後の海外経験を中心に記載しています。

【書評】STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか (NewsPicksパブリッシング)

Yahoo!Japanのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるYJキャピタル代表の堀新一郎さんの著書「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか 」が素晴らしかったので紹介させて頂きます。起業を考えている人はもちろん、全てのビジネスマンに多くの気づきと行動する勇気を与えてくれるはずです。

目次

 

購入のきっかけ:起業家の思考や行動を改めて理解したい

今回「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか」を手にしたのは、起業家の思考や行動について改めて理解し、参考にしたいと思ったためです。僕がCVCに所属していたときは年間250社以上の起業家と議論を交わし、日々彼らの想いや努力に触れていたのですが、CVCを離れて6年が経ってしまいました。今後の人生においても新事業創造を追い求めていくつもりなので、定期的なアップデートが欠かせません。また、僕は今、とある構想を実現したいと想い始めていて、その活動のための具体的な指針や参考事例が欲しかったこともあります。

 

結論から言うと、購入して大正解。上記目的を果たすことができました。

本書は、起業家や新規事業に関わる人だけでなく、全てのビジネスマンに「果たして自分はここまで本気で考え、行動しているだろうか」と考えさせてくれます

著名な起業家の苦悩や努力の事例が豊富なため、自分の人生で何を成し遂げたいか考えきれているだろうか」「ここまでやり切れていないかもしれない」「そっか、こんなやり方もあるんだ」という気づきや行動する勇気ももらえました。

 

いつも紹介していますが、僕はAmazon Audibleの会員(月額1500円)で、読書をしながらランニングしています。毎月1冊のオーディオブックを購入できることに加え、会員特典としてNews Picksアカデミアという著名人のセミナーが聴き放題でとても重宝しています。

本書は8時間44分の朗読でしたので、ランニング3回で初回(1.3倍速) を聴き終え、4-5回目のランニングで復習(2倍速)を終えました。

Audible (オーディブル) - 本を聴くAmazonのサービス

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  • 発売日: 2020/09/26
  • メディア: アプリ
 

 

テーマ別の事例が豊富:読者のステージに応じて示唆が得られる

本書はテーマ別に豊富な事例が用意されており、読者が今どのステージで戦っているのか、悩んでいるのかに応じて、多くの示唆を得ることができます。 

章立てとしては以下

  • はじめに スタートアップ業界の内側に閉じたノウハウを開放する
  • 第1章 アイディアを見つける
  • 第2章 最初の仲間を集める
  • 第3章 プロダクトを作り、ユーザー検証する
  • 第4章 ユーザーを獲得する
  • 第5章 資金を調達する
  • 第6章 起業するということ

ベンチャー創業に限らず、大企業でも事業開発に関わっている人なら、第1章アイディアを見つける、第3章プロダクトを作り、ユーザー検証する、第4章ユーザーを獲得する、第5章(社内で)資金調達をする、という観点からも学ぶところが多いと思います。

 

事例1:ビズリーチ創業者 南壮一郎氏 の「最初の仲間を集める」苦労と行動

本書を読むと、今でこそ成功されている起業家たちも、知名度もなくリソースが限られていた創業当初は必死でできることを模索し実行していたことがわかります。

そして、会社のブランドを使って戦っている我々の甘えも認識することになります💦

 

転職サイト ビズリーチ 創業者の南さん

外資系証券会社を経て三木谷氏の下で楽天イーグルス創業に関わった南さんは、もともと自身で何でもこなせると考えがちだったそうですが、創業期に同士を求める中で何百人にも断られることを経験😢。この経験を通して仲間の大切さを改めて実感したそうです。

  • "起業当時、僕は共に戦ってくれる仲間を集めるため数ヶ月で数百人に声をかけ自分の想いや事業構想を懸命に伝えました。でも「無理だよ」「絶対に成功しない」と誰も賛同してくれず、一時は自信を失いかけました。"
    その後、最初の仲間、佐藤氏と出会い、この人に恩返しするために絶対に成功させると誓うことになります。
  • 次にプロダクト開発するエンジニアが必要で、リアル/オンライン含めてエンジニアの集まりに足繁く通ったそうですが、成果はゼロ。IT経験がなかった南さんはエンジニアをリスペクトする会話ができず反発を買い、コミュニティ出禁になったこともあるそうです。最終的には最も優秀だと感じていた竹内氏に以下を約束して仲間になってもらったそうです。"必ず南と仕事をして良かったと言ってもらえるよう約束します。そしてその約束を僕は全力で守ります。"

99%断られるのがわかっていても、最高の出会いを求めて、自分の夢や構想を語り、誘い続ける努力と勇気。賛同してくれる仲間は待っていても見つからないので、とにかく行動するのみ。見習わないといけません。

事例2:サイタ創業者 有安伸宏氏の「プロダクトを作り、ユーザー検証する」巧みさ

サイタ創業者有安さん

個人指導コーチと受講生をマッチングするサービスのサイタは、クックパッドに2013年に買収され、2017年にクラウドワークスに事業譲渡されています。そのサイタ創業者・有安さんは今でもエンジェル投資家として活躍中ですが、その創業期のMVP (Minimum Viable Product) 検証プロセスが秀逸なので紹介します。

  • 梅田望夫さんの ウェブ進化論 を読み、これからはロングテールの時代だと感じる
  • ニッチ領域の習い事マッチングというニーズを検証するため、プロギターリストであった弟をコーチとして1時間当たりの受講料を設定し、渋谷でギターの個人指導を受けたい受講生を募集するWebサイトを本人が簡易的に立ち上げる
  • ほぼ獲得コストをかけていないにも関わらず、初月で10人もの申し込みがあったことで、市場ニーズを確信

お金も工数もかけず、MVPを作成して顧客ニーズ・価格を検証するのは最高の形ですが、言うは易く行うは難し。これをサクッと行った有安さんには驚きしかありませんが、MVP開発においてはとても参考になるベスト事例だと思います。

 

最後に:自分のエネルギーを出し切って完全燃焼し、納得できる人生を送る

本書は総勢17名の起業家が登場し、彼らの熱い想いや苦悩・努力が豊富に紹介されています。これらを読んで、結局、元大阪府知事・橋下さんが言っていることとも通づるなぁと思いました。「自分のエネルギーを出し切って完全燃焼したか / しているか」を問われている気がします。

skygo.hatenablog.com

 

最近僕も実現したい構想が固まってきたのですが、本書の後押しもあり、仲間を集める行動、ユーザ検証において動き出せています。死ぬ時に「あの時の熱い想いに対して何にも行動を起こさなかった / 中途半端だったな・・・」と後悔したくないので、本書に紹介される起業家たちのように、やれること全て進めていこうと思います❗️

 

  
 

【書評】下町ロケット (池井戸潤)

前回「半沢直樹 アルルカンと道化師」を聴いて、元銀行員のバックグラウンドを生かした池井戸潤氏の作品にハマった僕ですが、今回は直木賞を受賞した「下町ロケット 」のオーディオブック版を聴いてみました。正直、アルルカンと似たようなストーリーに思えましたが、それでも面白くて一気に聴き終えました。

目次

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聴いたきっかけ:Audible会員特典・無料ボーナスタイトルとして本書が付与

先日Amazonから案内があり、なんと今月からAudible会員特典が増えて、以下の2番が加わったとのことでした。

  1. 自由に選べるオーディオブック1冊(毎月コイン付与)
  2. 無料で聴けるボーナスタイトル1冊(月替わりでamazonが指定)
  3. 聴き放題のポッドキャスト(ビジネスからエンタメまで多数配信)

で、今月のボーナスタイトルが「下町ロケット」だったというわけです。

最初は「これって僕が池井戸潤氏の「半沢直樹 アルルカンと道化師」を購入したから、興味あると思ってAmazonが指定してきたんでしょ?」と思ったのですが、ログアウトしても同じボーナスタイトルが表示されるため、どうやら全国一律にこのタイトルのようです。

本書の朗読は 11時間 3分とかなり長めで、少し寝不足になりながらも平日の2−3日で一気に聴き終えることになりました(1.8倍速)

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  • 発売日: 2020/09/26
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下町ロケット」と「半沢直樹 アルルカンと道化師」のストーリーが類似

本書のストーリーは「半沢直樹 アルルカンと道化師」に似ていると感じました。池井戸潤氏の作品はこの2冊を読んだだけですが、他も以下のような感じなのでしょうか。

  • 中小企業が何らかのトラブルに巻き込まれることで、メインバンクの融資を渋られ、財務的に苦しい状況に追い込まれていく(しかも誰かの悪意があって)
  • 一方、その企業には実は隠された秘密または輝きがあり、主人公らが努力することでそれらを世に出して行く
  • その企業を小馬鹿にしていた金融機関や大企業(の一部の悪代官)が最後に大きなしっぺ返しを食らう 

ストーリーが似ているからといって面白くないという話ではなく、その逆。めちゃくちゃ面白かったです。

  • 判官贔屓で応援させ、一つの光明に期待させ、倍返しで感動的勝利を味わせる

うーん、この鉄板ストーリーを持つ著者は天才ですね・・・。

 

Cool Head but Warm Heart な殿村経理部長がとても魅力的

ロケットエンジンへの思いを相手にダイレクトにぶつけて行動していく主人公の佃社長もキャラがたっていますが、不器用だけど熱い思いを秘める殿村経理部長もキーパーソンかなと思います。

ジェットコースターのように激しく会社の状況が変わる中、感情的になったり浮足立ったりするメンバーも多いのですが、殿村部長は、常に本質を捉えた問いを投げかけたり、数字を元に冷静に悪代官と対峙したりするところがあり、とても魅力的でした。

例えば・・・

特許売却の是非

  • 今特許を帝国重工に売ることが本当に当社にとってベストの選択なのか、純粋にそのことを考えて頂けませんでしょうか。短期的には資金繰りが助かった方が私は楽です。でも長い目で見たときに本当にそれでいいとは私には思えないんです。

特許使用料 vs 部品供給

  • どっちの選択が10年先の佃製作所にとってメリットがありますか。もしうちがロケットのエンジン開発を手がけたことで新たな事業に結びつくのなら、その規模はどれくらいなのかなと思いまして。(中略)ビジネスの広がりというか可能性を考えたとき、一時的に金をもらってもうあとは傍で観ているだけというのはチャンスを逸している気がします。

帝国重工の田村氏による財務評価

  • 何か勘違いされていませんか、田村さん。こんな評価しかできない相手に我々の特許を使って頂くわけには行きません。そんな契約などなくても我々は一行に困ることはありません。どうぞお引き取りください。

 

彼のように常に Cool Head but Warm Heart でありたい。そして本書の佃製作所のメンバーのように、人生をかけてでも実現したいことに組織みんなで取り組む。これが本当の幸せなのだろうなぁと思います。

 

さて、下町ロケットのストーリーはまだまだ続くようですが、僕の中ではだいぶ勉強&モチベーション向上させてもらったので、ここで止めておきたいと思います。近い将来、人生にガソリンが必要になったときに、下町ロケット第2話以降に時間とお金を投資させて頂くことにします。

Amazonの思い通りにはならないぞ、と😁

 

下町ロケット (小学館文庫)

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【書評】半沢直樹 アルルカンと道化師 (池井戸潤)

先月まで日本では半沢直樹のドラマが流行っていたようですが、ドイツにいる僕は見れませんでした。とはいえM&Aが題材ということで関心もあり、シリーズ最新刊「半沢直樹 アルルカンと道化師」がオーディオブックでも発売されたため早速聴いてみました。

恥ずかしい話、僕は池井戸潤氏の小説を読むのが初めてというだけではなく、彼が銀行出身だったということも読後に知りました。本書の舞台とも言える「組織内の政治的駆け引き」や「融資・買収におけるパワーバランス」があまりにもリアルで、読書中ずっと「一体この著者は何者なのだろう・・・」と不思議に思っていたくらいです。

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購入のきっかけ:フィクションのM&Aってどこまでリアルに書いているの?

日本ででドラマが流行っていたので気になりました。M&Aを舞台に、半沢直樹という主人公が悪代官に「倍返し」するらしい。でもフィクションのM&Aってどういうものだろう、と。

Audibleのオススメで、シリーズ最新刊「 半沢直樹 アルルカンと道化師 」が紹介されていたので、早速購入して聴いてみました。本書は 9時間 と若干長めのオーディオブック。

通常オーディオブックは、週一のランニング中に1.5倍速で聴くだけなのですが、本書はあまりに面白かったため、ランニング後も居間でくつろぎながら一気に聴き終えることとなりました。 

いつもご紹介していますが、僕はAmazon Audibleの会員(月額1500円)で、ランニング中にいつも読書をしています。 毎月届くコインでお好みの一冊を購入できることに加え、会員特典としていろんなセミナーが聴き放題なので重宝しています。

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買収成立自体が目的化する

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、本書でリアルさを感じたポイントをいくつか。

 

一般的に、M&Aにおける買い手企業は、最終的には株主価値最大化を目指しながら様々な目的により企業の買収を検討します。例えば、技術獲得、人材獲得、事業成長の期間短縮、リスク回避などが目的になりえます。経営者は、M&Aでその目的を達成しうるか、M&Aが適切な手法か、投資収益性がハードルレートを超えるか、リスクを許容できるか、を検討し結論を出す責任があります。

ただ、買い手の関係者の中には、その目的達成は横に置き、「買収の成立自体がゴールとなる力学」が働く輩もいます。その一つが、買収手数料を事業収益としてM&Aアドバイザリーサービスを提供する証券会社や銀行です。

本書は、銀行内に間違いなく存在するこの力学に対して誰がどう抗うのか、がストーリーの中心。「組織の論理で振り切った悪代官」 vs 「顧客の立場に立つ半沢」の争いをスリリングに表現していて驚かされます。 

 

買収と融資の合わせ技で交渉

本書は、銀行のM&Aアドバイザリー部門の顧客(買い手企業)が、その銀行の別の顧客・融資先を買収検討するという展開。正直、こういうケースが実際どの程度起こりうるのかはわかりませんが、ここで実践した「銀行がその融資継続判断を握っているという強みを活かして買収交渉する」という手法は、事業会社での投資しか経験のない僕にとってはかなり新鮮に感じました。

って、かなりエグい合わせ技なので、実際こんなことをする輩はいるのだろうかとも思いつつ・・・

 

逆の情報の非対称性

通常、M&A時には買い手企業が売り手企業のことを綿密に調査・分析するデューデリジェンスが行われ、可能な限り、情報の非対称性を埋めるプロセスがあります。一方で、買い手企業のみがある情報を保有していて買収を優位に進めるシーンも見られます。これを「逆の情報の非対称性がある」とも呼ぶそうです。

本書のストーリーの骨格は、まさにそういった逆の情報の非対称性の是正。

実際の書籍の帯には「探偵半沢、絵画の謎に挑む」と表現されているようです。主人公がこの非対称性を謎解きのごとく是正していくにつれて、買い手と売り手のパワーバランスが徐々に変わっていき、そして最後には倍返しになる・・・。

このあたりも読者を魅了するとてもうまい構成・流れだなぁと感心します。

 

著者・池井戸潤氏 = 銀行出身 × 作家 × M&Aアドバイザリー社外取締役 × ...

さて、上述の通り、僕は読書中「著者は何者?なぜここまで組織内の人々の心情把握・表現ができるの?」という疑問がありました。今までで一番謝辞を真剣に読んだ(聴いた)くらいです。でも、答えは簡単でした。元銀行員だったからですね・・・

先日の記事で「強みの掛け算で自分にしかない価値を手にする」と書きましたが、著者がまさにいい例だと思いました。そして本書を読んで「やはりその掛け合わせの接点に注力して強みを磨いていくべき」と改めて感じます。

池井戸潤氏の強み

アドバンストアイ社沿革参照
2014年 アドバンストアイ株式会社の社外取締役池井戸潤氏が就任

 

おまけ:気に入ったやりとり・フレーズ

  • 悪代官:私にあってお前にないものがある、それは権力だ
  • 半沢:人事が怖くてサラリーマンができるか!やれるものならやればいい

今は、転職を経験したり、スキルアップしてある程度モビリティ高めたので、基本こう思えるんですが、 若いうちは思えなかったかもしれません。いずれにしろ、半沢直樹のように常に正義を貫いていきたいものですね。

 

半沢直樹 アルルカンと道化師

半沢直樹 アルルカンと道化師